なぜ「南向きの土地」なのに暗い家が多いのか?|建築士が教える光を取り込む設計の考え方
「土地を探すなら南向きがいいですよ。」
家づくりを考え始めると、一度はこの言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
不動産広告でも、
「人気の南向き」
「日当たり良好」
「陽当たり抜群」
という言葉が並び、南向きの土地は他の方角より価格が高く設定されていることも珍しくありません。
そのため、
「家を建てるなら南向きの土地が一番。」
「北向きの土地は暗い。」
そう考える方が非常に多くいらっしゃいます。
しかし、建築士として数多くの住宅を設計してきた私たちは、少し違う視点で土地を見ています。
実際に枚方市でも、南向きの土地に建っているにもかかわらず、
「昼でも照明をつけている。」
「一年中レースカーテンを閉めたまま。」
「道路から室内が丸見えになるので落ち着かない。」
そんな家を数多く見てきました。
一方で、
北向きの土地や旗竿地であっても、
「想像以上に明るいですね。」
「外から見えないのに、こんなに光が入るんですね。」
と驚かれる住まいもあります。
この違いは、土地ではありません。
設計です。
この記事では、「南向き神話」がなぜ生まれたのか、そして本当に明るく快適な住まいをつくるために必要な考え方を、建築士の視点から詳しく解説します。
「南向き=良い土地」という考え方は本当に正しいのか
日本では昔から、南向きの土地は人気があります。
その理由は、とてもシンプルです。
太陽は東から昇り、南側を通って西へ沈みます。
そのため、南側に大きな窓を設ければ、一日を通して光を取り込みやすいと考えられてきました。
実際に、昔の住宅では、
・南側に庭をつくる。
・南側いっぱいに掃き出し窓を設ける。
・リビングを南側へ配置する。
という設計が一般的でした。
もちろん、この考え方自体が間違っているわけではありません。
しかし、家を取り巻く環境は昔とは大きく変わっています。
昔と今では住宅環境が違う
例えば40〜50年前。
住宅地には今ほど多くの家が建っておらず、隣家との距離も比較的ゆとりがありました。
道路を歩く人も今ほど多くありませんでした。
そのため、大きな窓を南側へ設けても、
・光がしっかり入る。
・外からの視線もそれほど気にならない。
という環境だったのです。
しかし現在は違います。
枚方市でも住宅地の多くは家が建ち並び、道路には人や車、自転車が頻繁に行き交います。
南側に大きな窓を設けると、
道路からリビングが見えてしまう。
洗濯物まで丸見えになる。
夜は室内の様子が分かってしまう。
そんな状況になることも珍しくありません。
カーテンを閉めたまま暮らす家が増えている理由
家づくりのご相談で、
「明るいリビングにしたいです。」
というご要望はとても多くあります。
ところが実際に完成した家を訪問すると、
昼間でもレースカーテンが閉まったまま。
厚手のカーテンまで閉めているご家庭もあります。
理由をお聞きすると、
「道路から見えるので。」
「向かいの家と目が合うので。」
「人通りが多くて落ち着かないので。」
というお答えが返ってきます。
せっかく南向きの土地を選び、大きな窓を設けても、カーテンを閉めてしまえば光は十分に入りません。
さらに、風も通りにくくなります。
つまり、
南向きの土地を選んだことよりも、窓の配置の方が暮らしに大きく影響しているのです。
本当に明るい家は「窓の大きさ」で決まらない
「もっと明るくしたいから、大きな窓を付けましょう。」
そう考える方もいらっしゃいます。
しかし、窓を大きくすればするほど、
・夏は暑くなる。
・冬は熱が逃げやすい。
・家具を置く場所が減る。
・防犯面が気になる。
という新たな課題も生まれます。
建築士は、単純に窓を大きくするのではなく、
「どこから光を取り入れるか」
を考えながら設計します。
例えば、
高窓(ハイサイドライト)を活用する。
中庭から光を取り込む。
吹き抜けを利用する。
隣家との位置関係を考えて窓を配置する。
こうした工夫によって、プライバシーを守りながら明るい住まいを実現できます。
「土地の価値」より「設計の価値」が暮らしを変える
土地探しでは、
「南向きだから価格が高い。」
「北向きだから安い。」
ということがあります。
しかし、その価格差だけで土地を判断してしまうのは、とてももったいないことです。
設計の工夫によって、北向きの土地でも心地よい住まいは十分につくれます。
反対に、南向きの土地でも設計を間違えれば、暗く、暑く、視線が気になる家になってしまうことがあります。
アルクハウスでは、
「土地に家を合わせる」のではなく、「暮らしに合わせて土地を活かす」
という考え方を大切にしています。
それが、SIMPLE NOTEの設計思想にもつながっています。

